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十四代目お礼文C(夜昼)





リクオが目を開ければ、覚醒したリクオがいた。
夜のリクオは相変わらず枝垂れ桜の幹に寄り掛かかり枝に座っている。それがやけに様になっているのが何となく気に食わない。それは恐らく外見が自分と似ても似つかないからなのだろうが。解りやすく言えば、ただの嫉妬である。

「よう」
「…こんばんは」

この世界に昼のリクオがやってきたことに気付いたらしく、流し目で片手を上げた。それにお決まりの挨拶で返す。
しかし、こうも逢うたび逢うたび地面に立っていないとなると、高い場所が好きなんじゃないかとリクオは勘繰りたくなった。記憶によれば、夜な夜なする散歩も蛇に乗って行くらしい。猿と何とかは高いところが好きとは言うけど、とぼそりと呟いた。

「何失礼なこと言ってんだ」
「いったあ!何するんだよ」

どうやら聞こえていたようで、持っていたらしい扇子で勢いよく叩(はた)かれた。

「あ?お前が生意気だからな、仕方がないだろ」
「君の方が生意気だ!」

屁理屈である。不満そうに夜の自分を睨むと、不可解なことに気が付いた。ひりひりと痛む額をさすりながら、あれ、とリクオは間抜けな声を出して尋ねていた。

「どうしてこの時期に扇子?」
「ああ…コレか?」

たまたま散歩の途中で拾ってな、と嘘か本当か分からない調子で返される。だがその前に、冬に扇子は全くもって考えられない組み合わせだった。拾うのも買うのもあまりしっくりこない。

「それ、やるよ」
「…はあ?」

しかも脈絡なくそれをくれると言う。うんともすんとも言わないうちに、扇子は放り投げられた。
目を白黒させつつ、きちんと受け止める。先程は額を攻撃した忌まわしいものが、今度は可愛らしく手に収まった。ついまじまじと見てしまう。

「なんだ、気にくわねぇのか」
「いや、別に…」

寧ろ、素直に嬉しかった。
リクオは扇子自体嫌いではないし、今広げて見たところ、とても気に入ってしまった。爽やかな薄い桃色を下地に、いくつもの桜の花びらが綺麗に浮かび上がっている。幻想的で、つい顔を綻ばせてしまった程だ。
それに、夜のリクオが自身に贈ったということに何よりの価値がある。リクオは胸がじんわりと温かくなった。

「コレ、本当にくれるの?」
「当たり前だろう。男に二言はねぇよ」

そう言い置いたあと、

「だが、いつも持ってろよ」

俺も気に入ってるんだから、と言う彼にリクオは直ぐさま頷いた。少し広げて、月光に透かしてみたりなどして眺めたあと、大事に懐にしまう。その途端に、胸のあたりがふわふわした感じに襲われる。幸せだった。
だが、何故突然くれたのだろう。

「今日はクリスマスらしいじゃねぇか」
「…あ」

気付いて、直ぐに謝った。
彼はくれたがリクオは何も用意してすらいない。まさかこちらに気付かれないように準備していたとは思わなかったのだ。
しかし夜のリクオは、平然と構わねぇよ、と言い放った。

「…でもなあ」
「何も形じゃなくていいだろうよ」

こうしてお前と一緒に過ごせるんだからな、と夜のリクオは恥ずかしい台詞を囁いた。間近で聞いてしまった昼のリクオは顔を赤くして、そっぽを向く。
――――どうしよう、この後の展開、読めるんだケド。

「なあ、いいだろ?」

艶のきいた声で聴覚をくすぐられた。
確認しないで欲しい。今は、答えられそうにない。

「…ってか、今日は夜の散歩はいいの」
「今警備の目を厳しくしたら、不粋だろう」

―――それに流石に今は目を開けたくないしな。
リクオがその言葉を理解する前に、甘く口を塞がれた。
その後のことは、枝垂れ桜だけが知っている。






翌朝、目が覚めたリクオを待っていたのは大量のプレゼントの山だった。
最後に聞いた言葉の意味を彼が理解したのは言うまでもない。




Merry X'mas and a Happy New Year!






****
ある意味昼若総受けですが、一応夜昼若の総愛され話だと主張します。
これを拍手に載せるのは如何なものか、と悩みましたが載せちゃいました←
X'masには間に合いませんでしたが(意外と忙しかったんですよね)、全てのキャラクターに愛だけ詰め込んだ話となっております。
本当は三羽烏でも書こうと思いましたが、気力が…!←


今年はお世話になりました!来年も宜しくお願いしますね^^






20091227





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